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子犬の頃から育てたのにもかかわらず、噛む・唸るなどの高い攻撃性を持ってしまったワンちゃんは、どうしてそんなワンちゃんに育ってしまったのでしょうか。もともと気が荒い犬種だったからでしょうか。攻撃性が高い素質をもった子犬を選んでしまったからでしょうか。
米国では、 年間何百万人という人々が愛犬の噛む・唸るなどの問題行動に困り果て、専門家に助けを求めています。
そんな攻撃性の高い犬とその飼い主に対し、ペンシルバニア大学獣医学部助教授ジェームズ・サーペルととヴァレリ-・オ-ファレルが行なった研究の中に、興味深い答えがありました。
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どちらに、より多くの共通点があると思いますか?
【高い攻撃性を持ってしまった犬の共通点】と、【高い攻撃性のある犬に育ててしまった飼い主】、どちらにより多くの共通点があると思いますか?
犬?
それとも飼い主?
結論から述べると、顕著な共通点を示したのは【飼い主】の方でした。
飼い主の性格の酷似
攻撃性が高い犬種(1千頭)の年齢、性別、去勢手術の有無、攻撃性を見せ始めたきっかけなどを調査し、犬に有意な共通点を見いだせなかったジェームズ・サーペルは、次に、飼い主に焦点を当てました。飼い主の性別、家族構成、そして、控えめに飼い主の性格診断を行ないました。
その結果、飼い主の性格診断項目の【感受性が強すぎる・混乱しやすい・感情的に行動する・恥ずかしがり・臆病である・躊躇する・社会規範に無頓着・決まり事を守れない・言うこととやることが矛盾している・意欲満々・ひどく興奮しやすい】などが顕著に一致しました。
次に、ヴァレリ-・オ-ファレルが攻撃性の高い犬の飼い主50人を対象に、犬への意識調査・接し方調査、そしてアイゼンクの性格検査を行ないました。
アイゼンクの性格検査とは?
1975年にドイツの心理学者ハンス・アイゼンクによって開発された質問紙検査で、年齢・性別・知能に左右されない・信頼性の高さ、で知られています。主に精神医療の分野で用いられるもので、48の質問で回答者の内向性・外向性・神経症傾向・虚偽性によって性格を分析するものです。(MPI モーズレイ性格検査とも呼ばれています。)
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※外向性尺度は0〜20スコア有り、スコアが高いと外交的、低いと内向的ということを示しています。神経症傾向、虚偽度0〜10スコア有り、スコアが高いほど真面目にテストを受けていない可能性の高さを表します。
ヴァレリ-・オ-ファレル の研究でわかったこと
高い攻撃性を持つ犬の飼い主50人にアイゼンクの性格診断を行ない、ヴァレリ-・オ-ファレルは、これら飼い主が2通りのグループに分けられることを見出しました。
・1つめのグループは、【犬に感情的に固着する飼い主の“溺愛グループ”】で、
・2つめのグループは、【神経症の飼い主グループ】でした。
溺愛グループの傾向
・犬にのめり込みすぎて、犬が何かした時の狼狽が激しく、一気に冷静さを失う。
・犬が吠えれば散歩に行き、犬がボールを持ってくれば遊んでやる。
・犬に対し自我がない飼い主。
神経症の飼い主グループの傾向
・感情的で、犬に対し一貫性のある態度を示すことが出来ない。
・そのような飼い主の犬は、噛む・唸るなどの攻撃性だけでなく、破壊・マウンティング・尾追い・ハエ追い・自傷など、その他の異常行動も行なっていた。
『〇〇をすると、犬から下位にみられる』という通説
また、溺愛グループの飼い主の殆どが、犬と一緒に寝る、一緒にご飯を食べる、一緒にソファに座る、などの行動も取っていました。
もしかしたら、このような、“〇〇をすると、犬から下位にみられる”という、行き過ぎた通説が広まったのは、溺愛グループに分けられるような飼い主達の背景があったからなのかもしれません。
犬はまるで小さなあなた自身
一緒に生活する犬が飼い主にそっくりになるのはよく聞く話です。あなたが不安を感じれば、ワンちゃんは同じように同調します。
まるで小さなあなた自身です。
もちろん、十分なしつけや運動を与えていないことにより問題行動があわられることもありますので、この研究結果が全てに当てはまるというわけではありませんが、それでも、飼い主が先に心身ともに健康になることが、ワンちゃんの行動を正す1つの要因であることに間違いありません。
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<参考文献>