目次
DobermanName:SENA(♂・8ヶ月)Owner:ETERNALPEACH様
まるで当たり前のように、人間の家族の地位に君臨した犬達。今や多くの専門家たちが、しつけ方や犬論を研究し、セミナーやプレゼンテーションなどで熱く語っています。
一体いつから、このような白熱した論議が繰り広げられるようになったのでしょうか。
早速、家庭犬のしつけのはじまりからみていきましょう。
戦前1900年頃『服従しろ!!』アルファ論のはじまり
「犬は人間に絶対服従しなければならない。服従しなければ体罰を!」というアルファ論の土台となる概念が、今からおよそ100年ほど前、ドイツの軍用犬訓練士達によって広められた。
※アルファとは狼の群れでいうところ【階級第一位=ボス=リーダー】のこと。
※第二次世界大戦が勃発する前のことである。
戦後〜1960年頃 日本で最初のペットブーム到来!
軍犬として活躍した犬達は【家の番犬】という新たなステージへ。これは住宅地の急激な展開を背景に、番犬用として犬の需要が高まったことに起因する。
しかし、犬のしつけは重視されておらず、家庭犬でありながら放し飼いも多く、どこか“野犬”のような飼い方が普通だった。
1970年頃『犬は狼の子孫である!!』アメリカで大流行
犬が狼の子孫であるならば、「狼の群れの概念を家庭犬にも取り入れるべきだ」として、飼い主が群れのリーダーになるしつけ、つまり、戦前の“絶対服従のアルファ論”に、“狼の群れ”という概念が加えられ、より洗練されたアルファ論が普及した。
家庭犬のしつけ、最初の改革である
この“家庭犬のしつけ”に旋風を巻き起こしたのは、なんと、アメリカの神に仕える修道僧たち。彼達が書いた『著:ニュースキートの修道僧たちによるスピリチュアル・ドッグ・トレーニング』は大評判となった。
・“家庭犬のしつけ”に『飼い主は群れのリーダーでなければならない』が広まる。
・褒めることもするが、身体的な体罰も必要である。
狼の群れという新しい概念は加わったものの、戦前の“体罰”は残ったままとなった。
当時の流行った犬の服従強化法
・犬を仰向けにして服従姿勢を強要する。
・マズルをつかむ。頭を揺する。身体を拘束する
・犬が食べているものを横から取り上げ、唸ったら服従姿勢を強要する。
つまり、人間が狼のアルファ役を担うことが重要であると考えられた。服従姿勢を強要することと、体罰を行なうことは犬にとって良いことだと誰もが疑わず信じていた。
しかし、結果として、これらを強要することによって、アルファになるどころか、飼い主に反抗的な態度を示す犬が多くなった。
【その頃の日本】
・日本ではようやく放し飼いの規制が強化され、庭につながれる犬が多くなった。
1980年頃『褒めるだけで良い!?』ポジティブ論勃発!
【ガッチガチのアルファ論+体罰】にアメリカのトレーナー達が立ち上がった!イアン・ダンバー 、テリー・ライアン 、カレン・プライア 等が、これまでのしつけ方に対し、真逆のしつけ方【ポジティブ論】を発表。
家庭犬のしつけ、第2の改革である
彼らのセミナーには多くの愛犬家がおしかけ、その方法を学んだ。しかし、この【ポジティブ論】は、結果として【何があっても、どんなことがあっても、絶対に犬を怒ってはいけない】と解釈してしまう飼い主を多く育ててしまうことに。ペットブームもあいまって、マナーを知らない犬が増えてしまった。
<資料:以下はイアン・ダンバー氏のセミナー動画・スマホ視聴だとうまく翻訳されない場合があります。>
とても素晴らしいことを話しています。しかし、これまで体罰が当たり前のガッチガチのアルファ論に感化されていた飼い主達には、少し斬新過ぎたのかもしれません。
(パソコンからの視聴をおすすめします。スマートフォンからだと日本語に翻訳されない場合があります。)
-PR-
【その頃の日本】
・犬が【庭の番犬】から【豊かさの象徴】と考えられはじめた。
・マルチーズが人気犬種に。
・2000年も間近な1998年3月、ようやく、70年代アメリカで大旋風を巻き起こした『著:ニュースキートの修道僧たちによるスピリチュアル・ドッグ・トレーニング』が日本で出版された。
2000年頃『犬をリハビリし、飼い主を訓練する』シーザー・ミラン登場!
そんなポジティブ論により蔓延した、ナヨナヨした飼い主に対し、『褒めるだけではダメだ!!』と唱えたのが、アメリカのドッグトレーナー【シーザー・ミラン】である。
「犬をリハビリし、飼い主を訓練する」と述べ、問題犬の原因は飼い主の行動だとする。「お前が悪いと指を指せば、3本の指は自分を向いている(人差し指で犬を指すと、中指から小指は自分を向く)」と語り、2002年から放送された彼のトレーニング番組は瞬く間に人気を博し、彼を、問題犬・飼い主の“救世主”にまで押し上げた。
-PR-
家庭犬、3度目の大改革である。
シーザー・ミランの教え
飼い主が「穏やかで毅然としたエネルギー」で犬を扱えば、犬は穏やかで従順になると考える。飼い主が恐怖・興奮・心配・弱気といったマイナスの精神状態で接すると、犬は飼い主を群れのリーダーとみなさないという。
十分な運動を通じて犬のエネルギーを発散させ、明確なルール・境界・制限を設け、犬が穏やかで従順である時に愛情を与えるべきだとする。
なんと!1970年代に流行した、『著:ニュースキートの修道僧たちによるスピリチュアル・ドッグ・トレーニング』の『飼い主は群れのリーダーになるべし論』が、体罰はないものの、再燃することに!
【その頃の日本】
・日本でも犬を室内飼育する家庭が増え始める。
・ミニチュア・ダックスフンドがブームに。
・家庭犬のしつけへの感心が高まる。
2009年~【群れのリーダー論】に『待った!』をかける学者達
拍車をかける【飼い主は群れのリーダーになるべし論】に、「犬の世界に群れの序列はなかった!!」と、訴える学者達が現れる。
犬の行動学の第一人者レイモンド・コピンジャー博士 をはじめとする専門家達が、最新の研究結果をもとに、感情や思考、知能、行動……犬の常識を覆す発表を次々に行なった。
特に大きな発見は、野生の狼は両親とその子供達で群れを形成し、子供たちは自分の親である両親に従っていたという、まさに、狼は階級第一位のリーダーに従っているという、これまでの概念が見事に打ち砕かれました。
わたし達が群れのボスと思い込んでいた狼は両親(しかも母も父も立場に差はありません)で、下位と考えていた狼は、その子供達です。末っ子の狼が骨を食べている最中に、横取りしようと近づいたお兄さんの狼に対し「とらないで!」唸るしぐさも確認されています。子供から先に食事をとらせる両親の狼もいました。
比較的新しい情報では、ブリストル大学獣医学部教授ジョン・W・S・ブラッドショーの、これまでの狼の見方の間違いを述べたプレゼンテーションや、【犬はあなたをこう見ている ---最新の動物行動学でわかる犬の心理 】が「NYタイムズ」ベストセラーとなり話題に。
(猫の行動学【猫的感覚(著ジョン・ブラッドショー) 】も「NYタイムズ」ベストセラー&NPRブック・オブ・ザ・イヤーを受賞した。)
他にも、これまでのリーダー論に意義を唱える書物が次々に発売されている。
とりわけ、2009年に発売された、トゥーリッド・ルーガス の犬の行動学【カーミングシグナル 】は日本でも評判が良い。
現在、【犬には“アルファ”ではなく、規則を教える“親”が必要】論
このように、たった数十年の間に目覚ましい変化を遂げている【家庭犬のしつけ】。狼の群れに対する考えが誤りだったことがわかった現在は【犬には規則を教える“親”的な存在が必要】論が着実に広まりだしています。
犬に必要なのはリーダーではなく、規則を教える“親”の概念
・「〇〇をしたら犬に下位に見られる」という考えはない
たとえば、「犬より先に玄関をでないと下位に見られる」、や「犬より後にご飯を食べると下位に見られる」、「犬と一緒にソファに座ると下位に見られる」、などの考えが親論にはありません。
・物事の良し悪しを教えるのに、いちいち、子犬を仰向けにして「お前は下位だ。上位の私に逆らってはいけない」とする必要はない
良いこと、悪いことを教えるのに、いちいち、下位だ、上位だ、など考える必要はないとことです。
少し遅れをとる日本では、つい最近、ドッグ・トレーナーのカリスマ【シーザー・ミラン】の到来に胸が高鳴った愛犬家の方達も多いのではないでしょうか。
しかし既に、シーザー・ミランの教えにさえも、リーダーが必要な点において、「待った」を言う人々が現れだしています。
まさに現在、第4の家庭犬改革が起ころうとしている最中です。
しかし、シーザー・ミランは、リーダーが必要と説きながらも規則・規律の重要性も訴えています。つまり、今まさに広まりつつある【規則を教える親が必要論】の、飼い主のメンタル面の良い橋渡しになるのではないでしょうか。他にも、彼の説いた飼い主への教えには、はっとさせられるものもとても多いです。
今まで当たり前のように使っていた言葉【リーダー】
もし本当に、犬がわたし達飼い主をすきあらば下位にし、上位になろうと昼夜問わず考えている動物なら、おそらく、“人間の家族”の地位まで、犬がのぼりつめることは無かったでしょう。
これまで抱いていた“リーダー”の解釈を見直さなければならない時期が、すぐそこに来ていることは確かなようです。
【ETERNALPEACH様、写真のご提供、誠にありがとうございました。複数枚ご提供頂いた写真は別途掲載させて頂きますので、掲載までもう暫くお待ち下さいますようお願いいたします。】
-PR-