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Guest*Book

零下30℃の世界に暮らす犬【シベリアン・ハスキー】

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ーーシベリアーー

極寒の地を原産とするこの種の名を【シベリアン・ハスキー】という。

強靭な精神と肉体、群れとしての高い社会性と統一性、ユーモアと愛嬌、これほどまでに、極寒地に適応したナチュラルな使役犬は、おそらく他にはいないだろう。

 

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極寒地の使役犬【チュクチ・ドッグ】

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<チュクチ・ドッグのはっきりとした起源は知られていない。しかし、15〜6世紀頃にはすでに存在していたのではないかと言われている。出典:YouTube>

シベリアン・ハスキーは、かつて【チュクチの犬】と呼ばれていた。【チュクチ】とは、ユーラシア大陸の最北東端に位置し、ロシアの中でも大自然を有し、冬には零下30℃〜40℃という厳しい寒さを記録する土地である。そして、その地に暮らすチュクチ族(通称エスキモー)が代々飼っていた犬達のことを【チュクチの犬】と呼んだ。

チュクチの犬達は、非常に稀な“ナチュラル”である。

ナチュラルとはつまり、“人為的ではない”ということだ。チュクチ族は何世紀もの間、外部との交流を持たなかった。それゆえ犬達も、自然に犬種が固定したのだ。これは、非常に稀な固定経緯である。

この犬達は、チュクチの民にとって、生きるために欠かせない存在だった。狩猟や荷運び、番や護衛、あらゆる面で力を借り、共に生活していた。

チュクチ・ドッグ、アラスカへ。

<犬ぞりレースは昔も今も、極寒地での大切な催し物である。>

1900年に入る頃、時代の変化もあり、チュクチ族は外部との貿易を行うようになった。輸出の品は、小型〜大型獣の毛皮、そして、彼らの生活の支え【チュクチの犬】だった。

輸出先であるアラスカ州では当時、犬ぞりレースが盛んに開かれていた。小さな子供から大人まで、誰もがレースに夢中だった。そのレースに勝利するために、いち早くこのチュクチの犬に目をつけた若い青年がいた。彼はチュクチの犬だけのチームを編成し、そして出場した。

結果は圧勝だった。

レースファンの中で徐々にチュクチの犬が浸透しはじめた頃、このチュクチの犬は、その名を一瞬にして世界中に知らしめる偉業を成し遂げた

英雄バルト

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<血清を運び、ノームまでの最終区間を走破した犬ぞりチームのリーダ犬バルトと、ガンナー・カーセン氏。出典:Balto >

画像は、アラスカ州のノームの町で疫病が大流行した1925年、治療に必要な血清を犬ぞりで運んだ際のチームのリーダー犬バルトと、その隊を率いたガンナー・カーセン氏である。

当時、アラスカ州全土はブリザード(猛吹雪)に見舞われていた。全ての交通手段を絶たれていた中、ノームの町で最悪の疫病が流行した。救命には、一刻も早く血清が必要だった。しかし、血清があるアンカレッジからノームの町へは、1,000km近くも離れていた。

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そこで、アラスカ州政府は、アンカレッジからノームまでの各町の犬ぞり勝者、計200頭の犬ぞりチームを選抜、16頭1チームで100kmをリレーし、血清を輸送することに一縷の望みを託した。

町の中でも優秀な犬ぞりチームとそのオーナーが選ばれた。その際、ノームへの最終区間を任せられたのが、犬ぞりチームのリーダー犬【バルト】と、隊を率いるガンナー・カーセン氏である。

そして、このバルトとチームの犬達こそが、【チュクチの犬】だった。

 

彼らの偉業は、ディズニー映画 や本【Balto's Story (Dog Heroes) 】などで出版されているため、恐らく“ブリザードの中、血清を運び、多くの人々の命を救った犬【バルト】”を知るものは多いだろう。

<このディズニー映画は大人でも十分楽しめる構成となっている。この場では割愛するが、興味がある人は一度見てみるのも良いだろう。Disney-バルト(DVD)>

 

しかし、敢えてここでスポットを当てたいのは、バルトではなく【トーゴー】という、また別のチュクチの犬についてである。どうしても血清を現地に届けたバルトだけが有名になってしまっているが、実際にはもう一匹、英雄が存在する。

 

忘れられた英雄【トーゴー】

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<出典:Leonhard Seppala 

ノームの町の住人であるレオンハート・セッパラ氏(画像左)は、チュクチの犬を率いる犬ぞりチームを編成し、地元のレースにて功績を見事おさめていた。

町に疫病が流行し、アラスカ州政府が1チーム100kmの血清リレーを計画した際、セッパラ氏と犬ぞりチームはこれまでの功績から、1チームだけでノームから約500km離れたヌーラトまで血清を受け取りに行くことが決められた。実際はシャクトゥーリク(200km)という町までの走行で済んだが、それでも計300kmを走破という最長距離には変わりはない。)

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青い矢印:セッパラ氏とトーゴー、緑の矢印:チャールズ氏、ピンクの矢印:カーセン氏とバルト

セッパラ氏は計20頭のチュクチの犬によるチームを編成し、ノームを出発した。その時のリーダー犬こそが【トーゴー】である。トーゴー達が走破した区間(青い矢印)は、この血清リレーの中でも、最も過酷な史上最悪の道のりだったと言われている。

シベリアン・ハスキー

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血清を届け多くの人々の命を救ったことをきっかけに、チュクチの犬達は、正式な犬種【シベリアン・ハスキー】として公認された。ハスキーとは、エスキモーという意味を持つ。そして、その2年後にはAKCにおいてスタンダードも決定した。 

 

現在、シベリアン・ハスキーは多くの国で人気犬種となっている。もちろん、ニューヨークのセントラルパークにたたずむ【バルト像】による影響もあるだろう。日本でもシベリアン・ハスキーを主とした漫画などが放送され、その人気はとどまるところを知らない。

しかし、 【トーゴー】について知る者はあまりいないだろう。トーゴーは一部の愛好家の中だけで語られている【忘れられた英雄】だ。・・ーーだが、現在のシベリアン・ハスキーの血統をたどると、とても面白いことが起こる。

ーーそれは、AKCに登録されている今日のシベリアン・ハスキーの殆どが、【トーゴー】と、セッパラ氏が所有していたチュクチの犬達に遡るのだーー。

 

なぜ、バルトではないのか。

簡単なことだ。バルトは早いうちに去勢されていたのだ。誰もがその血統を求め、そして事実を知り悔やんだ。だが、もしーー、バルトが子孫を残せていたらーー…、トーゴー達は本当に忘れられた存在になってしまっていたかもしれない。

 

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