ドーベルマンに多い疾患の1つに強迫性障害、別名【ブランケット(ウール)・サッキング】と呼ばれるものがある。これは“犬が毛布やタオルを執拗に吸い続ける”という行為のことを言い、この症状が重度になれば、吸う対象が毛布やタオルから自身の体(脇腹)へと移ってしまうーー・・・。
果たしてこれは何が原因なのだろうか?
アメリカ、(タフツ大学獣医学科NEWS)より、非常に興味深い研究成果が発表された。
ドーベルマンの強迫性障害(OCD)
症状の重いドーベルマンのOCD
強迫性障害を持つドーベルマン70頭のゲノム(遺伝子)配列を解析
この研究を行なったのは、マサチューセッツ州にあるタフツ大学獣医学研究員とマサチューセッツ大学医学部研究員による、獣医学と人間医学の研究チームである。
彼らは70頭の強迫性障害(ブランケットサッキング)を患うドーベルマンのゲノム(遺伝子)配列解析、比較を行なった。
その結果、重篤な強迫性障害と強く関係する染色体上の2つの遺伝子座と、相関を示す3番目の遺伝子座の特定に成功した。中でも重篤な強迫性障害に最も強く関係した遺伝子座は、34番染色体上にあり、3つのセロトニン受容体遺伝子を含む領域であった。
人と犬の強迫性障害が酷似しているという発見
この研究チームは、2010年に【強迫性障害に罹患したドーベルマンの脳の反応は、強迫性障害を罹患した人の脳の反応に酷似している】と、MRI研究成果を発表しており、今回新たに、ドーベルマンの遺伝子座を特定したことでより、さらなる人と犬の類似性が示された、と述べている。
研究チームのメンバーであるマサチューセッツ大学医学部の教授、エドワード・ギンズ博士は、「現行するヒトの強迫性障害の治療は、すべての患者において良い成果をもたらしているとは言えない。また、人間の神経・精神医学的疾患に関するヒトゲノム研究は困難である。しかし、ドーベルマンとの酷似性は、新たな治療法を発見するのに役立つだろう」と、人間医学の観点から述べている。
同じく研究チームのメンバーであるタフツ大学獣医科のドットマン氏は、「この発見は、犬にとって、より良い治療薬を得るための重要な発見である。」と獣医学の観点から述べ、「人と犬との類似性が他の強迫性障害研究者によって完全に受け入れられれば、人にとっても、犬にとっても、新しく、より効果的な治療への道を示すだろう」と言う。
参考文献: